これまで3回にわたってレントゲン検査についてお話してきましたが、最後に放射線の影響について触れないわけにはいきません。
レントゲン検査で使用するX線は、放射線と呼ばれる電磁波です。この放射線は人体に対して無害ではありません。人体が放射線にさらされることを被曝(ひばく)と呼びます。大量の放射線を一度に浴びれば身体を形作っている細胞が壊されてしまいます。また頻繁に放射線にさらされればガンや白血病など細胞の突然変異から起こる病気になる可能性が高まります。照射される放射線の強さや頻度(時間)が多ければ多いほどその影響は大きいと言えます。その為に、X線については、様々な研究がなされています。
では,実際に、レントゲン検査で受ける放射線の影響は大丈夫なのでしょうか?
実は、私たちは普通に暮らしている中でも宇宙と地面から発せられる放射線にさらされています。これを自然被曝と言います。普通に暮らして一年間自然被曝する放射線量と比べると、デンタル(小さなフィルムのレントゲン)ではその1/100、パノラマ(全体を診る為のレントゲン)では1/50、顎に限定されたCTでは1/7くらいの量となります。このように歯科のレントゲン検査では人体に大きく影響のあるような多量な放射線を一度に浴びせるようなことはないのでご安心ください。
レントゲン検査は、被曝を考慮に入れてそれでも診断や治療のために必要不可欠と判断した上で初めて受けていただく検査です。安全のためレントゲン室は放射線管理区域となっており、四方の壁に鉛が埋め込まれ頑丈な扉で密閉出来るようになっています。こうして室内で放射されるX線が外へ漏れないようにしています。もちろん当院のレントゲン室もこの基準に準じています。また当院では、検査に当たっては安全に最小限の放射線量で済むように努めています。例えば撮影に使用するフィルムを感度の良いものを使用することで、より少ない照射量でも鮮明なレントゲン写真が出来るようにしています。またデンタルの撮影の際には鉛の入ったエプロンを首から掛けていただき、首より下には放射線が当たらないようにしています。妊娠されている方にはお腹の子供への影響も考えレントゲン検査を控えることもあります。ですから、妊娠の可能性のある方は、必ずスタッフにお声掛け下さい。
このようにして行われるレントゲン検査ですから私たち歯科医療従事者は安全にそして正確に撮影することを心掛けています。またレントゲン写真に映し出される情報を的確に読み取り・診断していくためにさまざまな知識を学び経験をつんでいくことが大切だと考えています。
インプラント治療においては、お口の中にある歯・骨の健康状態を把握するため、またインプラント治療が可能かどうか判断するため、そしてインプラントを含めた形での治療計画を立てるためにデンタル、パノラマ、CT、それぞれの検査が必要となります。今回のお話の中で、これらのレントゲン検査で得られる情報をきちんと診断し治療計画を立てる事がインプラント治療の成功のために重要であることがお分かり頂けたでしょうか?
今度、来院されたとき治療の合間に余裕がありましたらご自分の歯のレントゲン写真をじっくり覗き込んでみて下さい。人間の身体って奥深いものだなとつくづく感じられますよ。