先週のブログで、さる3月24日、25日に開催された『Pacific Osseointegration Conference』に出席したことをお話しました。今回はその講演の内容についてお話しさせて頂きたいと思います。
この大会の中で、ブローネマルクシステムの生みの親である、ブローネマルク教授の講演がありました。
「インプラント」というと歯を失った部分の治療をイメージされる方が多いと思いますが、その他の治療でインプラントが使われていることはご存知でしたか?
ブローネマルク教授は今回の講演の中で、様々なインプラント治療の症例を見せてくれました。
歯科の中では歯を失う以外に、顎の骨そのものを失ってしまう病気があります。
主に腫瘍が多いのですが、その他に胎児期の遺伝子の異常で顎の骨が形成されずに出生する口蓋裂という疾患があります。失った顎の骨を人工的に作り固定するためにインプラントが使われます。
また顔面領域では、目、口、鼻、耳のほか顔面の骨や頭蓋骨の失った部分にもインプラントが応用されています。
医科の領域では、リウマチの治療で使われていることをご存知の方も多いと思います。人工関節を固定するためにインプラントが使われています。関節だけでなく、義足や義手、一本の指を固定するためにもインプラントが使われています。
ブローネマルク教授は骨とチタンがくっつくことを発見し、それが臨床に役立つかどうかを知る一つの手段として、歯を失った部分の顎の骨にインプラントをいれることから研究を始めました。
そして、身体に応用していく研究を進めていき、現在もブラジルに居を移しオッセオインテグレーション(骨とチタンがくっつく原理)を用いて人々に貢献しています。
ブローネマルク教授は、インプラントを歯に限定することなく身体の様々な部分に応用する事をはじめから考えていたのだと思います。本当に頭が下がる思いでいっぱいです。
実は、私達の歯科界では、インプラントを顎の骨の中に入れる事を「インプラントを打つ」と表現している人達がいます。まるで板に釘を安易に打込んでいるかのように感じてしまうのですが、私達の仕事はそうではないのです。
教授は講演の中で『私達は生きている生体(顎の骨のこと)を相手にしている。私達はこの事を謙虚に受け止める必要がある。』というようなことを言っていて、とても印象的でした。
私には、今のインプラント界に対する苦言のようにも受け取れました。
このお話しは次回に続けたいと思います。