8月も今週を残すだけとなりましたね。まだまだ暑さは厳しいですが、夏の終わりの気配が感じられますね。さて、今回は前回に引き続いて読売新聞の医療ルネサンスの記事についてです。
8月6日の読売新聞の医療ルネサンスに、「歯を失ったら」と題してインプラントに関する記事が掲載されていた記事に関するお話です。インプラントに関する不幸な記事が続いています。とても悲しい事です。
記事は要約すると
「都内の歯科医院で、下顎の奥歯にインプラント治療を受け、そのうちの一本の具合が悪いため再手術を受けたそうです。その結果、下顎の中を通る神経をインプラントがつき刺してしまい、その神経をねじ切ってしまい麻痺が起きてしまった。」とのことでした。
前回は、「下顎の神経の損傷」という事に付いては、下顎の奥歯の部分に対するインプラント治療の際に、一番注意しなくてはいけないことだという事がお分かりいただいたと思います。
特に奥歯を歯槽膿漏で失ってしまわれたような場合や何らかの理由で顎の骨が細くなってしまった場合は、残された骨の量が少なく、顎の骨の厚さや、深さが充分に取れない場合があるのです。
そのような状態で、無理をしたり、あるいは充分な術前の検査をすること無しに手術を施したりするとこのような事は充分に起こり得るのです。
逆に言えば、術前の検査を充分におこない、正確な診断をすることによってこのような偶発症は、殆ど防ぐことができます。
では、その為にはどのような検査が必要でしょうか?
まずは、基本的にパノラマエックス線撮影が必要になります。
この装置は、殆どの歯科医院にあるものです。これは上下の顎の状態をある程度(ここが大切です)正確に調べることができます。
しかし、この撮影方では、殆どの場合、実際のサイズよりも大きく映し出されてしまいます。その為、まず映しだされるエックス線画像が、実際にどのくらいの倍率になってしまうのか、それぞれの歯科医院でチェックする必要があります。
ちなみに当院のエックス線装置は、1,3倍の大きさになるように設定されており、実際の検証でも1,3倍の画像が映し出される事を確認しています。その拡大率から実際の顎の骨の大きさを判断し、適切な長さのインプラントを選択する事が大切です。
つまり、この倍率の確認が正確にできていないと想定と実際のずれが大きくなってしまい、今回のような事故につながる可能性があります。
また、この撮影では、患者さんの位置づけが重要で、その位置づけを誤ると映し出される画像に大きなひずみが生じてしまうのです。
ですから位置づけに付いても注意が必要で、得られた画像が少しでもおかしいと思ったら再度撮影が必要になります。
他にも、
撮影中に患者さん自身が動いてしまうこともあり、その場合も映し出される像にひずみが生じてしまいますので、撮影の際は、スタッフの指示に従うよう御協力をお願い致します。
もちろん、何度もレントゲンを撮る事はけして良いことではありませんが、事故を未然に防ぐためには御協力を頂く事がある事をお許し下さい。
ただし、最近の優れたタイプのエックス線装置は、患者さんがうけるエックス線の量も可能な限り少なくなるようになっており、殆ど心配はありません。
つまり、殆どの歯科医院にあるパノラマエックス線撮影装置を正確に取り扱うことで、診断の精度をあげていくことが出来る事になります。
この様にすれば、初歩的なリスクの回避が可能となりますが、それだけでは充分といえません。
その事については、次回にさせて下さい。