先週は、インプラント手術の際の麻酔法についてお話をさせていただきました。今日は、実際の手術についてお話しをしたいと思います。
当院では、「2回法」といわれる方法でインプラント手術を行っています。2回法とは、手術を2回行うという意味ですが、1回目の手術では顎の骨の中に直接、インプラント体を埋入します。みなさんのお体の中にインプラント体が直接入るという、インプラント治療においてとても重要な部分がこの手術です。
術式を簡単にご説明すると、歯肉を切開し、ドリルで骨に穴をあけ、インプラント体を埋入し、歯肉を縫合するという流れで行われます。今日は、手術の始まりである歯肉の切開についてお話をします。
歯肉の切開は、その手術の良し悪しを左右するとても重要な手術のスタートです。切開の方法、丁寧さによって歯肉の治り方は明らかに違います。手術をした痕跡すら残さない歯肉の治り方は、歯肉の切開の仕方に大きく左右されます。インプラント治療だけでなく、歯肉の中に埋まっている歯を抜く時や、重度な歯周病に対する外科処置の際にも歯肉の切開を行います。治療の目的によって切開の方法は異なりますが、インプラント手術の際は、頬側の歯肉、上顎の裏側の歯肉、歯の咬む面側の歯肉などに切開をいれる方法があります。どのような切開にするかは、インプラントを埋入する場所と、顎の骨の形態、歯肉の状態、被せ物が完成した時の歯肉の審美性などを考慮して切開の位置を決めます。
また、切開の際にはメスを使いますが、切開法に合わせてメスの種類を選択します。メスにも様々な形があり、手術部位の状態、用途、目的によって使い分けることで 、最善の治癒が期待できるのです。
先月、スウェーデンに研修に行ってきました。ハルムスタッドという町の州立病院で、実際の手術を見学してきました。スウェーデン人は歯肉が厚くて繊維質なようで、日本人に比べると頑丈そうに見えました。もし見学させていただいたように、日本人の歯肉を扱ったなら、きっと歯肉がひきちぎられてしまうと思います。人種間の違いもあり、研修を受けたからといって、すべての人を同じように手術をするのはとても危険なことなのです。個々の状態に合った、ベストな方法で手術を行うことがとても重要なのです。
前回から、麻酔や切開と痛みや怖さをイメージするお話が続きますが、みなさんには見えない部分なだけに、手術がどのように行われているのかを知っていただけたらと思っています。次回も、手術についてお話しをしたいと思います。