インプラントの事故に関する報道の後、このブログのアクセス数が増えています。このような不幸なことをきっかけに増えるというのは考えものですが、少しでも皆さまの不安や疑問が解消され、何らかの形でお役にたてることを願っております。
さて、本日の質問です。
私は上下の奥歯が四本ないのですが、入れ歯はどうしても入れたくありません。実際に今入れ歯を使わなくても、多少不自由ですが、食事もできています。このままではダメでしょうか?
実は、欧米では最近「短縮歯列」といって、無理に奥歯に入れ歯を入れたりインプラント治療を受けたりせずに、放置しておいても良いのではないか、という考えがあります。
この短縮歯列というコンセプトは、日本でも注目されています。
これは、糸切り歯の隣の歯(後ろ側の歯)があり、できればもう一本その後ろまで歯が存在していて、それが咬み合わせをしっかり保っていれば、無理に奥歯に何らかの治療(入れ歯、ブリッジ、インプラント等)を入れなくても問題は起きない、という考え方です。おそらく、この質問をされている方も同じような状態にあるのではないでしょうか?
どのような治療でも、それを選択される場合、一番大切なことはご本人が納得されるということです。ですから、ご本人が今あまり不自由を感じていないのなら、そのままでも良い場合も十分考えられます。
しかし、その様な場合で、ご自身としては今不自由がなくても、今後何か問題が起こる可能性がないかは歯科医師とよく検討されることが大切です。
私たちが日常臨床で困ってしまうことの一つに、この質問の様に、今は痛くもなく不自由もない部位が、このまま放置することで将来問題が起こってしまう可能性がある場合、そのことをご理解いただかなくてはならないことがあります。
当たり前ですが、患者さんは、不自由を感じていないところを突然指摘されても、そう簡単に、そこに問題があるとか、いずれ問題が起こるということを理解したり、納得したりすることは難しいと思います。しかし、私たちはプロとして日々様々な患者さんを診させていただいている上で、今後起こりえる問題を予測することはある程度可能なわけです。
ですから、信頼できる歯科医師と今現在のことだけでなく、今後のことを十分考慮にいれ、検討された方が良いのではないでしょうか。