前々回お話しさせていただいた、『IPPO(いっぽ)』という雑誌に掲載された記事が、紙面の都合もあり十分な内容が掲載されず、疑問も多くあると思いますので、そのことに関する質問にお答えしていこうと思っています。
では、今回の質問です。
「雑誌では、いろいろなインプラントの治療法が紹介されていて、それに対してコメンしていましたが、その一つのフラップレス手術とは具体的にどんな手術なのでしょうか?」
フラップレス手術とは、最近注目されているインプラント手術の一つです。
基本的には、メスで歯肉を切開せずに、特殊なドリルで歯肉に穴を開け、インプラントを埋め込むという方法をとるものです。
メリットとしては、切開をしないため痛みや腫れが少なく、手術も上手くいけば短時間で済みます。このようなメリットは大切なことで、患者さんにとってとても有意義なことです。
デメリットとしては、手術部位を直接視覚的に確認できるわけではないので、インプラント体を埋め込む場所が不確実になってしまったり、方向を誤ったとしても、その場で確認することが不可能となってしまったりすることがあります。
万が一にもドリルで顎の骨に穴をあけるときに、方向を間違ってしまって、それに気づかずにドリルを進めてしまうと、場所によってはとても危険なことがあります。日本を含め世界から、何例かの重篤な事故が起こってしまったという報告もあります。
そしてもうひとつ問題があります。
チタン製のインプラント体が骨と直接くっつくためには、チタンという素材の表面に形成される酸化膜というものが大切になると言われています。
その酸化膜が、他の何物にも触れず、最初に患者さんの骨に触れることが大切だと私たちは学んできたのです。
このことを踏まえると、フラップレス手術は、問題があるのです。
歯肉を切って開かないために、インプラント体を埋め込む際、最初にインプラント体が直接触れるのが、骨ではなく歯肉になってしまうのです。
インプラント体が入るために必要な直系の穴を歯肉にあけ、そこからインプラント体を埋め込むため、必然的にインプラント体は歯肉に触れながら顎の骨の中に埋め込まれていくのです。この矛盾は、具体的に解決されないままに結果として(短期間の追跡)はうまくいっているから問題ない、ということになっているのです。
私たちとしては、この問題がもう少し時間が経ち、十分な検証がされてから導入するべきではないかと考えております。