またもや、残念なことですが、インプラント治療にまつわる雑誌報道がありました。
本件については、事実確認が出来ないので詳しいコメントはできませんが、当院のブログの閲覧数の増加や、問い合わせもありますので、私見を述べさせていただきます。
まず、「インプラントの使いまわし、あるいは再使用ということはあってはいけない事」です。この記事に掲載されている、小宮山歯科医師の意見は、もっともなことなのです。
小宮山先生は、チタン製インプラントを日本で初めて導入したとされていますが、単に先駆者であっただけではないのです。現在の日本で安全に、そして確実にインプラント治療が、できるようになったのも小宮山先生の尽力なしにはありえなかった事なのです。
では、なぜこのような事が起こってしまったのでしょうか?
実際の理由は、定かではありませんが、そのひとつに、小宮山先生の教えが、そして近代インプラントの父であるブローネマルク教授の教えが現在は軽視されているのではないかと思う事が多々あるのです。
お二人の教えは、当たり前の事なのですが、それがあまりにもシンプルで、基本的、保守的なものであるがために重要視されていない気がするのは私だけではないと思います。
例えは悪いですが、イチロー選手があのような偉業を成しえているのも、日々の生活を律し、派手な練習ではなく、地道にストレッチやキャッチボール、トスバッティング等を心がけているからだと思うのです。その行為は取り上げるにはあまりにも当たり前で、目新しいものではありませんが、とても大切で重要な事なのです。
短期的にはそれをサボったとしても、すぐに問題は出ないかもしれないこと、でも少しずつ取り返しのつかにことになることそれを守り続けることの大切さ、大変さを私達は再認識しなくてはいけませんね。
守っていないのは、一部の歯科医師だけではなく、インプラントに関連する歯科医療関連企業等もあると感じてしまうのです。
歯科医療関連情報誌等では、インプラント関連市場規模がいくらである等が騒がれており、利益のみを考えてインプラント歯科医療に参入してくる企業も多々あるようです。利益を追求することが悪いと言っているのではありません。ただ、本来考えなくてはいけないのは、患者の利益であり、それを提供したうえで企業、医療従事者が利益を得るというのが正しいことだと思うのです。利益を追求するあまり、そしてそれがあまりにも近視眼的なために、結果として事件、事故に至るというのは多々ある事です。
とても残念なことですが、インプラントを取り巻く環境もそうなりつつあるのかもしれません。
マスコミの報道も夢の治療のように取り上げてみたり、またとても恐ろしい治療とうったえみたりと一部偏り過ぎたものもあり、それに踊らされてしまっているような気がします。
また、今回の記事にも出てくるのですが、歯科医師の治療レベルを図る指標としてその症例数の多さだけに目が行ってしまっているようにも思えます。
実際に、私が尊敬している歯科医師は、ほとんどインプラント治療の手術は多くても一日に2〜3症例程度しか行っておらず、丁寧な手術を行っているのです。
そして、設備を充実させ、スタッフをしっかり教育しています。
その代償として、インプラントの治療費が平均的相場(この考え方、言葉が医療行為に使われることに私は違和感を感じているのですが、あえて使わせて頂きます。)よりは高くなっていることも事実です。
今回の事とは、無関係ですが。このような事が起こる前は、しっかりと丁寧に、行っている歯科医院を、あたかも高額医療費を請求する歯科医院と称し、安価で、症例数の多い歯科医院を患者の事を考えている、あるいは患者の身になった親切な歯科医院と表現していることもあるようです。 もちろんそれがすべてではありません。多くの歯科医院が一生懸命患者さんの為に診療している事は忘れてはいけないと思います。
インプラント治療のみならず、皆さんの安心安全の為には、決して目新しい事ではなく、地道な努力の積み重ねが大切なのだと思います。