先週までで、医療の世界、あるいは医学の世界が多くの皆さんが思っていらっしゃるよりも不確実な部分があるということがおわかりいただけたでしょうか?
それではなぜ、健康情報や医療・医学を語るのに、統計や数字が使われているのでしょう。
一つには、先に述べたように医療・医学の世界にはまだまだ不確実な部分が多いということ、そして、医学には「絶対」がないということを意味しているといえます。
これは、言いかえれば、人間の体は複雑で、工業製品を作ったり、修理したりするように単純にはいかないと言うことの表れなのです。もちろん工業製品でも、マニュアル通りにはいかないことはあるでしょうし、その技術者、職人さんの勘所が大切になってくることもあると思います。
しかし、医療ではたとえば、よく効くとされる抗生物質のような薬でさえ、ある程度の人(10%前後)で、事前にその薬効に定めた期間内に、期待どおりの効果が得られないこともあるといわれています。
ですから、薬の効果がある・ない、効果がでるまでの時間、そしてその薬によって引き起こされてしまうであろう副作用の有無、種類、そしてその程度などはいずれも一定ではなく、人によって異なってしまうのです。だから、薬の能書き、あるいは使用説明書はじっくりと読めば読むほどわかりにくいものなのです。
人の体が、複雑で医療がいかに進んだ現代でも、不確実な部分がおおく、そして未知なるものも多いがために、
どのようなことが原因で、治療結果や薬に効果にそのような差が生じるのか、治療を行った患者さんや治療を行わなかった患者さんの情報をたくさん集めて検討すること(これを統計と言います)で、その要因を明らかにする必要があるのですね。その過程では、数字を使った要約は不可欠なのです。
ですから、医療関係者は数字や統計学というものを用いて分析していくことで、治療効果を少しでも高くしようと努力しているのです。