これまでのインプラント手術の成功率は93,5%って安心?
上のフレーズはよくあるものですよね。
でも、93.5%では少しわかりにくいので、これまでのインプラント手術の成功率は100%にしてみましょう。
では、この歯科医院で、あなたがインプラント手術を受けるとしたら、成功する確率は100%でしょうか?
そう思いたいでしょうが、残念ながら、そうではありません。
でも逆にこれまでのインプラント手術の成功率は100%なんて言われたら、ちょっとうそくさくありませんか?そう思ってしまう私は、疑い深いのでしょうかね?
では、100%の手術成功率―これは、今まで行った手術の総数が1例でも、あるいは100例でも5000例であっても、それぞれ成功した手術件数が1、100、5000例であれば、ウソではありません。
しかし、たとえ同じ成功率100%だとしても、それぞれの医院で、次に手術を受けた時に、成功する可能性は、手術の経験数が増えるほど上がります。
これは、極端に聞こえるかもしれませんが、統計学的に見ても経験数が限られているうちは、その成功がたまたま偶然に起こっている可能性があるからです。
医学の世界では、あることを100回行って95回は正規分布(極端なばらつきを除外した範囲、統計結果のグラフや表の両端2.5%を除いた範囲)の範囲の結果が得られるだろうという95%信頼区間というものが用いられます。
この95%信頼区間の考えを用いて、成功率100%の手術が次に成功する可能性の最低ラインを手術の経験数ごとに計算してみましょう。
そうすると、以下のようになります。
これまで行った手術が
1人中1人が成功の場合 → 成功率の下限は 5%
2人中2人が成功の場合 → 成功率の下限は 22%
3人中3人が成功の場合 → 成功率の下限は 35%
10人中10人が成功の場合 → 成功率の下限は 74%
となるのです。
すなわち、1人受けて1人成功した手術を、次にあなたが受けた場合に成功する割合は、最も厳しく見積もると5%ですが、すでに10人中10人が成功していれば、同じように厳しく見積もっても74%の成功率が望めることになります。
つまり、このような成功率の表示についてだけいえば、症例数の多い方が信頼性が高くなるといえるのですが、だけが太線になっていることからもご想像はつくと思うのですが、症例数がただ多ければいいというのではないんです。
それについては次回をお楽しみに。