2009年5月13日付けの朝日新聞、「インプラント治療注意点は」の記事に対する2回目のコメントです。
では始めます。前回と同様記事を黒字で、私たちのコメントを赤字で表記します。
手術の成功率は95%以上程度だが、まれに体質的に合わない人もいる。
「インプラント治療の成功率は術後10年で、95%以上とされています。」と表現されている事が多いのではないかと思います。 これは、ひとつの事実なのですが、十分な回答とはいえないと考えます。結論からいうと、ある一定の条件をクリアした上では、インプラント治療の成功率は術後10年で、95%以上になるといえます。しかし、この一定の条件をクリアすることが、本当に守られているのかが問題です。
詳しくはこちらをご覧ください。http://www.118.md/e_implant/02_01.html
http://blog.118.md/article/13234764.html
そして、ここで言われているとおり、ごく稀ではあるが、治療としてはうまく出来たにもかかわらず、インプラント体が骨とくっつかない場合もあるのです。
手術時に下あごの骨の中を通る神経を傷つけると、唇などにマヒが残る。
これも大変不幸なことですが、実際には比較的起こりやすいトラブルだといえます。下顎の骨、糸切り歯よりも奥の歯がある部分には比較的太い神経が通っています。インプラントを埋める手術に際して、何らかの間違いでこの神経を傷つけると唇やその周りにマヒが起こってしまいます。神経の傷つき方がひどい場合は、このマヒがずっと取れないこともあります。ですから、十分な注意が必要で、治療方針の決定や診断時にCT等の検査をすることが大切です。
麻痺についてはこちらもご覧下さい。
http://blog.118.md/article/13109118.html
2007年には手術中に動脈を傷つけて大量出血し、患者が死亡している。
大変残念ですが、日本国内で、インプラント手術において死亡事故が発生した事は事実です。 まず、何よりも亡くなった方のご冥福をお祈りする事が第一だと思っておりますが、医療に携るものとしてはこのような事が二度と起こらぬ為にも、また一方的な報道等がなされてしまう事によって間違った認識を皆様がされてしまわない為にも、私見を述べます。
インプラント手術に伴い生命を脅かす様な偶発症にはどのようなものがあるのでしょうか?
今回の原因も、おそらくは以下のことが考えられます。
下顎の比較的前の方に手術を行う場合に、舌側の歯ぐきを剥ぐ時にこの動脈を傷つけてしまったり、また逆に充分に歯ぐきを剥がずに骨にドリルで穴を開けてしまい、その際に方向がずれている事に気づかず、ドリルが骨を飛び出してしまい、ドリルでこの血管を損傷させてしまう事があります。
とくに、十分に歯ぐきを剥ぐ事をせずにドリルで血管を損傷させてしまう事が問題です。そして、損傷した血管から出血が起こり血液が舌の下の、のどの周りに溜まってしまい、気管を圧迫して窒息を引き起こしてしまう可能性があります。
この事実は、私の知る限りでも1986年のKrenkel&Holznerの文献を筆頭に10以上も発表されています。逆に言うと生命を脅かす様な出血の偶発症のほとんどは下顎の前歯に近い部分の手術時に起こりえる事だと言えます。
この様な事故を防ぐ為には、まずは充分な手術時間をとり、余裕を持って手術を行う事が大切です。
しかし、残念ながら医療上の偶発症をゼロにする事は不可能に近いとも言えます。
ですから、あってはいけない事ですが、もし事故が起こってしまったとしてもその事故に適切にそして迅速に対応するように日頃からトレーニングを怠らず、万が一の事を想定し病診連携等を確実にとる事も大切です。
インプラント治療に伴う、このような重篤な偶発症に関しましては、以下のブログも参照して下さい。
http://blog.118.md/article/13194753.html
http://blog.118.md/article/13195096.html
http://blog.118.md/article/13195690.html
http://blog.118.md/article/13195849.html
http://blog.118.md/article/13196251.html
http://blog.118.md/article/13198091.html
http://blog.118.md/article/13199327.html
http://blog.118.md/article/13201290.html
インプラント治療全般に関してはこちらをご覧下さい。
http://www.118.md/e_implant/index.html次回は、この続きです。よろしくお願いします。
もう既に何回もお伝えしましたが、当院のHPhttp://www.118.md/もリニューアルすることが出来ました。いかがでしたでしょうか。ご覧頂けましたでしょうか?
まだの方はぜひ、ご覧になってみて下さい。http://www.118.md/よろしくお願いします。