馬見塚デンタルクリニック
東京都中央区明石町8-1 聖路加ガーデン内 セントルークスタワー1階

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本日の質問です。

2回の手術もいらず、その日のうちに咬めるのならば、やはりそれをやってほしいと思うのですが、どんな場合にも可能なのですか?」                                                    

 即時加重インプラントは、条件の良い顎の骨の場合は、すぐに咬めるようにすることも可能で、条件さえそろえばお勧めできますが、残念ながら全ての患者さんの顎の骨の質が良いわけではありません。

 基本的に、充分な術前の診査、診断が大切で、その上で、即時加重インプラントが可能かどうかを判断します。

 しかし、術前の検査で、即時加重インプラントが可能であろうと判断された場合でも、実際に手術をしてみると、診断どおりにはいかずに、従来の方法にその場で変更する事もあります。

 また、施術後も、食事を注意していただくなど、経過を十分に追っていく必要があります。

 つまり、条件がそろい、患者さんの協力が頂ければ、ひとつの選択肢となりえますが、全ての患者さんにお勧めできる万全な治療法とは言えないのです。

本日の質問です。

「即時インプラントとは、どのようなものなのでしょうか?」

 即時インプラント、あるいは即時加重(荷重)インプラントと呼ばれるものは、手術をした日にすぐに咬めるようになるインプラントの総称です。

従来は、一回目の手術から、上顎で6ヶ月、下顎で3ヶ月の治癒期間をおき、その後に2回目の手術を行います。そして、型どり等を行った上で人工の歯を作っていくため、一回目の手術から咬めるようになるまでに一定の期間を要していました。
この期間は、入れ歯や、仮歯を使用するため歯を失った本数や場所、そして状態によっては、不便を感じることもあるわけです。

そのような、不便さを可能な限りなくすために新しい試みとして普及し始めたものが、即時加重型インプラントというものです。

さて、本日の質問です。

「フラップレス手術が万能ではないということは分かりましたが、その上でフラップレス手術の利点はどのようなことでしょうか?」

フラップレス手術の利点は、手術後の腫れがほとんどなく、痛みも少ないということです。また多くの場合は、即時加重という方法をとるため、すぐに咬めるようになるという利点もあります。

基本手技にのっとった従来の方法では、歯肉を顎の骨からはがすという方法がとられるため手術後、比較的腫れやすくなります。またフラップレス手術は、手術後の痛みも従来の方法より出にくいと言えます。

しかし、従来の方法でも、多くの場合は強い痛みが出ることはありません。また、鎮痛剤も十分に効くため、痛みについての有利さはそれほどないかもしれません。

前回までにお話した欠点(ナビゲーションシステムを用いる上の精度、歯肉を切って開かないために、インプラント体を埋め込む際に、最初にインプラント体が直接触れるのは、骨ではなく歯肉になってしまう事等)が、解決されれば、フラップレス手術は優れた治療法の一つと言えます。実際に現在も様々な機関で、研究、調査が進んでいる段階です。

 では本日の質問です。

「それでは、たとえナヴィゲーションシステムがあったとしても危険だということですか?」

すべてが危険なわけではありません。

一般的に通常の方法で行ったとしても安全だとされるような症例では、フラップレス手術も安全に行える可能性が高いと言えます。

逆にCT等の診断で難しいと判断された症例の場合、ナヴィゲーションシステム等に頼りたくなりますが、これは問題が起きる可能性も考えられます。ナヴィゲーションシステムを構築していく上で起こる誤差等があるためすべてが正確にできるわけではないからです。

やはり、このようなシステムは頼り切るのではなく、上手く利用しながら行うことが肝要ではないでしょうか?

最終的には、ナヴィゲーションシステムは発展途上のシステムであり、使い方を間違えなければ良いが、全ての状況において信頼に耐えるものとは言い難く、それを使う側の能力にかかわると言えるでしょう.

 9月に入り、夏の終わりが感じられるようになってきましたね。日本は四季を感じられるから良いと思っていますが、地球温暖化でだんだんと四季感も薄れてくるのでしょうか?

では、本日の質問です。

先生は、フラップレス手術のデメリットとしては、「手術部位を直接視覚的に確認できるわけではないので、インプラント体を埋め込む場所が不確実になってしまったり、方向を誤ったとしても、その場で確認することが不可能となってしまったりすることがあります。」と言われていますが、実際には、事前にCT等を撮影しそのデータに基づいて確実に診断し、安全に手術が行えるように、手術をガイドできるようなマウスピースやナビゲーションシステムがあるから安全だ、と聞いているのですが、本当ですか?

おっしゃる通り、現在、そのようなシステムは多数存在します。当院もそのようなシステムの一つの開発、導入のお手伝いをした経緯もあります。

結論から申し上げますと、このようなシステムのほとんどが、すべての状態で正確に機能しているわけではなく、ある程度の許容範囲が必要だということなのです。

極論ですが、現在ある多くのシステムは比較的安全な症例では、ほぼ問題なく機能するが、手術の難易度の高い症例では、このようなシステムに頼りすぎると間違いが起こることがあると言えます。実際に、いくつかの報告が世界中から上がっているのです。

これから、このようなシステムも熟成がすすみ、より確実で精度の高いものとなっていくと思いますが、まだ現時点では問題もあると言わざるを得ないのが現状でしょう。

前々回お話しさせていただいた、『IPPO(いっぽ)』という雑誌に掲載された記事が、紙面の都合もあり十分な内容が掲載されず、疑問も多くあると思いますので、そのことに関する質問にお答えしていこうと思っています。

では、今回の質問です。

「雑誌では、いろいろなインプラントの治療法が紹介されていて、それに対してコメンしていましたが、その一つのフラップレス手術とは具体的にどんな手術なのでしょうか?」

フラップレス手術とは、最近注目されているインプラント手術の一つです。

基本的には、メスで歯肉を切開せずに、特殊なドリルで歯肉に穴を開け、インプラントを埋め込むという方法をとるものです。

メリットとしては、切開をしないため痛みや腫れが少なく、手術も上手くいけば短時間で済みます。このようなメリットは大切なことで、患者さんにとってとても有意義なことです。

デメリットとしては、手術部位を直接視覚的に確認できるわけではないので、インプラント体を埋め込む場所が不確実になってしまったり、方向を誤ったとしても、その場で確認することが不可能となってしまったりすることがあります。

万が一にもドリルで顎の骨に穴をあけるときに、方向を間違ってしまって、それに気づかずにドリルを進めてしまうと、場所によってはとても危険なことがあります。日本を含め世界から、何例かの重篤な事故が起こってしまったという報告もあります。

そしてもうひとつ問題があります。

チタン製のインプラント体が骨と直接くっつくためには、チタンという素材の表面に形成される酸化膜というものが大切になると言われています。

その酸化膜が、他の何物にも触れず、最初に患者さんの骨に触れることが大切だと私たちは学んできたのです。

このことを踏まえると、フラップレス手術は、問題があるのです。

歯肉を切って開かないために、インプラント体を埋め込む際、最初にインプラント体が直接触れるのが、骨ではなく歯肉になってしまうのです。

インプラント体が入るために必要な直系の穴を歯肉にあけ、そこからインプラント体を埋め込むため、必然的にインプラント体は歯肉に触れながら顎の骨の中に埋め込まれていくのです。この矛盾は、具体的に解決されないままに結果として(短期間の追跡)はうまくいっているから問題ない、ということになっているのです。

私たちとしては、この問題がもう少し時間が経ち、十分な検証がされてから導入するべきではないかと考えております。

昨日の雷雨といい、その後の涼しさ(寒さ)といい、変な天気ですね。

最近騒がれている地球温暖化問題、一方では大問題だと騒ぎ、他方はそんなに問題ない温暖化対策と言ってやっていることが問題だと論議しているようですが、一体どうなんでしょう。

こういう議論を聞いたりしていてつくづく思うのは、何が正しいかではなく誰が正しいかに終始してしまっているような気がします。自分たち側の意見の正当性を証明することに終始していては問題の解決は得られないのではないでしょうか?

私たちが今、目を向けなければならないのは、そこにある真実と、そして何をしなければいけないかだと思うのです(たとえそれが大変な選択だとしてもです。)

この大きくそして小さな地球に、自然の摂理を無視するようなかたちで人口が増え続け、便利さを求め続けた結果なのですから、自分たちに有利なことだけを考えるのではなく、地球全体のことを考えて、何かを努力してかなければいけなのではないでしょうか。

さて、本日の質問です。

今は抜くほどでもないが、将来には問題を起こす歯がある場合というのは、とても難しい問題ですね。

やはり、私たち患者側としては、なるべく歯は抜きたくはないですから。

そうすると、その予知性が低い歯を含めて、その代わり丈夫な歯もブリッジの土台にすれば、確実に長持ちするのでしょうか?

ブリッジや入れ歯の設計を考えるうえでは、ブリッジや入れ歯自体の寿命だけではなく、他のまわりの歯の寿命も充分検討する必要があります。

しかし、時として私たち歯科医師も、自分が入れたブリッジや入れ歯を長持ちさせたいが為に、必要以上に歯の数を多く削ったり、ブリッジの土台や入れ歯をかける為の装置をつけるために歯の神経を抜いてしまったりすることもあるかもしれません。そうすると、短期的にはある程度ブリッジや入れ歯の寿命を延ばすことが可能になりますが、結果として、長期的には失う歯の本数を増やしてしまうこともあるのかもしれません。

極端に聞こえるかもしれませんが、長期的展望にたった場合、今現在は、患者さんの自覚もなく、痛くもない歯でも、抜歯の対象にすることで、長期的に見ると結果として、失う歯の本数を減らすことができる場合もあるといえると思います。

また、言いかえれば丈夫な歯を土台に含めることで、そのブリッジ自体の寿命は延ばすことが可能となります。

ですから、万人に向けて最善の方法というのはありえず。各々の患者さんの状態や価値観に合わせた選択が大切です。

多くの皆さんが、お盆休みを取られているのではないでしょうか?

当院は、明日8月16日(土)がお休みとなります。ご不自由をおかけいたします。

もし何かお困りになられた場合は、申し訳ありませんが、来週の月曜日以降にご連絡ください。また、来週まで待てないような場合は、各地区に歯科医師会があり、そこで休日診療を受け持っているはずですので、問い合わせをしてみて下さい。
中央区休日応急歯科診療所は下の通りです。
住所:東京都中央区明石町12-1中央区保健所内
電話番号:03-3541-5420
診療時間:午前9時から午後5時(日曜日、祝日および年末年始)

明日発売のIPPO(いっぽ)という健康関連雑誌の150ページに、前回行われた健康歯考講座「最新インプラント治療の光と影」に関する記事が掲載されます。

1時間半の講座の内容を1ページに要約してあるため、お伝えさせていただいたすべてのことが網羅されているわけではありませんが、多少は参考になると思いますので、よろしければご覧になって下さい。

また、次回の健康歯考講座の開催が決定しております。公式ホームページにも詳細を記載しておりますが、きっと皆さまのお役にたてるものだと信じておりますので、ふるってのご参加お待ちしております。

10回健康歯考講座の開催が決定いたしました。
今回のテーマは「PMTC 〜Professional Mechanical Tooth Cleaning〜」についてです。
   日程:平成20119()9301130[受付開始 915]
場所:東京国際フォーラム ガラス棟  会議室 G701号

参加費は無料です。公開講座ですので、どなたでもご参加頂けます。
参加ご希望の方は、事前にお申し込みください。
講座の詳細、お申し込みはこちらへ  第10回健康歯考講座 

前置きが長くなりました、本日の質問です。

なるべく歯を抜かないようにすると、先生の言われる予知性の低い歯(あまり長持ちしないであろうと判断された歯)を残すことになるわけですよね。そのような予知性の低い状態の歯を、ブリッジの土台にしてもよいのでしょうか?  

予知性の低い状態の歯をブリッジの土台とする場合には、注意が必要です。その歯だけではブリッジの土台にするには心もとないが為に、ブリッジの土台にする歯の本数を増やしたり、土台にするために健康で、まったく削られていない丈夫な歯を削って土台にするような治療を考えた時、はたしてそれは正しいといえるのでしょうか?

予知性の低い歯だけでブリッジを入れるよりは、その隣あるいは、周囲の健康で丈夫な歯まで削って、土台にふくめることで、ブリッジの寿命は長くなるかもしれませんが、それが本当に正しい選択といえるのでしょうか?

今日から、北京オリンピックですね。この日のために頑張ってきた選手だけでなく、サポートしてくれたスタッフやコーチ、監督、そして予選で戦ってきたライバルたちがあってこそ成り立つ4年に一度の祭典、何よりも無事で競技はフェアーに行われることを願います。

そして、がんばれニッポン。

では、本日の質問です。

「前回の答えからすると、歯周病がある程度進行している場合は、その歯を抜いてしまった方がよいのでしょうか?」

私たちは、基本的には歯を抜かずに、守ることが歯科医師の使命だと考えています。

ですから、可能な限り歯を抜かない選択を第一としたいと思っています。

しかし、前述のような状態になってしまった歯、このような状態の歯を私たちは、長期的な予後の認められない歯、あるいは予知性の低い歯という表現をします。簡単にいえば今すぐには抜くほどではないにしても、その歯を支える骨が減っているような場合、いずれはそんなに先ではなく問題が起こる可能性があるような歯のことを表します。このような状態になってしまった歯の場合の治療方針の決定が、一番難しくなります。一つ間違えると選択した治療法が、その歯の寿命を短くしてしまうこともあり得るのです。

健全な歯であったとしても、いや健全だとするならなおのこと、ブリッジの土台にするには、その歯を削らなくてはならず、将来的には問題を引き起こす可能性があるわけです。まして、例えば歯周病になってしまっている歯(特に、予知性の低い歯)をブリッジの土台にする場合は、充分に検討することと、歯科医師とその歯に将来起こるであろう問題について、充分に話し合った上で治療を選択される事が大切です。

つまり、ケースバイケースになってしまいますね。

昨日まで、お休みをいただき、伊豆の方に出かけていました。

峠で自転車に乗ったり、海で泳いだり、走ったりという日々を仲間と過ごし、肉体的には負荷のかかったお休みでしたが、とても充実したお休みで、また行きたいなと思っております。

それでは、今回の質問です。

「歯周病があったとしても、歯周病の治療をちゃんと受けておけば安心ですよね?」

基本的には、そうだといえますが、実は、たとえ歯周病の治療をちゃんと受けたとしても、ある程度進行してしまった歯周病の場合、歯周病で失った骨を元あった状態に戻すことはかなり難しく、基本的に現状を維持し、歯周病の進行を抑制することが、現段階では、歯周病の治療のゴールとなります。

その為、歯周病の治療を受け、状態が安定したとしても、例えば、今すぐには抜くほどではないにしても、ある程度歯周病が進行してしまい、その歯を支える骨が減っているような場合は、治療方針の決定が一番難しい状態といえます。

Palmqvist先生たちが1994年に発表された論文では、ブリッジの土台になる歯に影響を与える要素を調査したところ、ブリッジをいれる時に土台になる歯のまわりの骨が減っている場合は、減っていない場合に比べて、土台になる歯の生存に関するリスクが2.5倍高かったそうです。

残念なことですが、ある程度進行してしまった歯周病の場合は、たとえ歯周病の治療をしたとしても、全ての歯がブリッジの土台としてしっかりと機能する状態になるとはいえないのです。

先週末は4日間、インプラントの勉強に行ってきました。師と仰ぐ先生から直接お話を聞くことができて、とても勉強になりました。アポイントが取りづらい状況で、お休みを頂いてしまって申し訳ありませんが、歯科医師としても、人間としても心から尊敬できる先生のお話は、頭と心に響き、私にとってとても大切な時間で、今後も機会があれば参加していこうと思っています。

それでは、本日の質問です。

「歯を失ったところに何もしないですむのはとても魅力的ですが、短縮歯列という方法も万全ではないということですね?」

いつもお話ししていることなのですが、万全な方法というものはないと思った方が良いのかもしれませんね。そして、私見ですが、短縮歯列という考えは、残念ながら日本人の場合は、骨格的に顎のアーチが扁平なため、奥歯を失うと食べ物が噛みしめにくくなりやすく、不自由な感じを受けやすいようです。それでも、奥歯に入れ歯を入れていないことがあるのは、歯科医師としては残念なことですが、入れ歯の装着感が悪いことが原因なのではないでしょうか。

しかし、本来あったはずの歯が、なんらかの理由で失ったのにもかかわらず、それを補わないというのは、やはり問題があるのではないかと思います。

ただ、失った歯を補う方法をよく吟味しないと、その方法によってまた問題が起こる可能性があります。問題がおこることを避けるために何もしなかったとしても、またなんらかの問題がおこってしまう可能性があるということだと思います。

やはり、いずれにしても歯を失った場合の治療法には様々なものがあるけれど、一つとして利点だけの物はないといえるのではないでしょうか。

ですから、信頼のおける歯科医師と十分に話し合い、その治療法の利点欠点を理解した上で、治療法を決定する事が大切です。

今日は、iPhoneの発売日ですね。何日も前から並んでいる方もいるみたいですね。混乱がないとよいのですが、どうなっているのでしょうか?

実は、私もマッキントッシュユーザーの一人でiPhoneに少し興味はあります。いったいどんなものなのでしょうね。

さて、今日の質問です。

「もし、短縮歯列が問題を起こすとしたらどんなことでしょうか?」 

実は短縮歯列が、顎関節症を引き起こす可能性があるという報告があります。現時点では、まだ長期的な経過を追ったデータはないという状態だと思います。

2004年に出された文献によると、「短縮歯列が、顎の関節に問題を引き起こすという明確な根拠はないものの、片側ないし、両側の奥歯がなくなることで顎の関節に、お口の開け閉めの際に音が出たり、痛みが出たりすることがあることは知っているべきである」という報告もあります。

なんともあいまいな表現ですね。

しかし、もしも顎関節症を引き起こす可能性があるとするならば、やはり用心する必要はありますね。

短縮歯列 とは

欧米では最近、無理に奥歯に入れ歯を入れたりインプラント治療を受けたりせずに、放置しておいても良いのではないか、という考えがあります。 糸切り歯の隣の歯(後ろ側の歯)、又はもう一本その後ろまで歯が存在していて、そこが咬み合っていれば、無理に奥歯に何らかの治療(入れ歯、ブリッジ、インプラント等)を入れなくても問題は起きないというコンセプトで日本でも注目されています。  

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インプラントの事故に関する報道の後、このブログのアクセス数が増えています。このような不幸なことをきっかけに増えるというのは考えものですが、少しでも皆さまの不安や疑問が解消され、何らかの形でお役にたてることを願っております。

さて、本日の質問です。

私は上下の奥歯が四本ないのですが、入れ歯はどうしても入れたくありません。実際に今入れ歯を使わなくても、多少不自由ですが、食事もできています。このままではダメでしょうか?

実は、欧米では最近「短縮歯列」といって、無理に奥歯に入れ歯を入れたりインプラント治療を受けたりせずに、放置しておいても良いのではないか、という考えがあります。

この短縮歯列というコンセプトは、日本でも注目されています。

これは、糸切り歯の隣の歯(後ろ側の歯)があり、できればもう一本その後ろまで歯が存在していて、それが咬み合わせをしっかり保っていれば、無理に奥歯に何らかの治療(入れ歯、ブリッジ、インプラント等)を入れなくても問題は起きない、という考え方です。おそらく、この質問をされている方も同じような状態にあるのではないでしょうか?

どのような治療でも、それを選択される場合、一番大切なことはご本人が納得されるということです。ですから、ご本人が今あまり不自由を感じていないのなら、そのままでも良い場合も十分考えられます。

しかし、その様な場合で、ご自身としては今不自由がなくても、今後何か問題が起こる可能性がないかは歯科医師とよく検討されることが大切です。

私たちが日常臨床で困ってしまうことの一つに、この質問の様に、今は痛くもなく不自由もない部位が、このまま放置することで将来問題が起こってしまう可能性がある場合、そのことをご理解いただかなくてはならないことがあります。

当たり前ですが、患者さんは、不自由を感じていないところを突然指摘されても、そう簡単に、そこに問題があるとか、いずれ問題が起こるということを理解したり、納得したりすることは難しいと思います。しかし、私たちはプロとして日々様々な患者さんを診させていただいている上で、今後起こりえる問題を予測することはある程度可能なわけです。

ですから、信頼できる歯科医師と今現在のことだけでなく、今後のことを十分考慮にいれ、検討された方が良いのではないでしょうか。

先日の産経新聞に「歯科インプラント手術を安全に」という記事があり、日本でインプラント手術用医療器具サージカルガイドを高精度に量産する技術の開発に成功したということですが、これはどのようなものなのでしょうか?

歯科インプラント手術を安全に・・・  (産経新聞より全文記載)

科学技術振興機構 医療器具を量産化

科学技術振興機構は、大阪大学大学院歯学研究科の荘村泰治教授らの研究成果をもとに和田精密歯研(大阪市淀川区)に委託していた、コンピューター断層撮像(CT)画像から歯科インプラント手術用医療器具サージカルガイドを高精度に量産する技術の開発に成功した、と発表した。サージカルガイドは一般医療機器の届出番号を取得済みで、同社が2月7日に販売を開始した。 歯が欠損したり、両隣に歯がない場合の治療法として、人工歯根をあご骨に埋め込んで人工の歯を装着する歯科インプラント手術が普及している。しかし、歯科医の勘と経験によるため、医療事故や不適切な処置の事例も増えている。 新技術は、CTで撮影した患者のあご骨部の画像から3次元画像を構築。コンピューター上で患者の残存歯や骨の状態に合わせて人工歯根の最適な埋め込み位置をシュミレーションし、そこにドリルを導くサージカルガイドを設計できるもの。 通常は患者の口腔内に金属による修復物があればCT画像が乱れて正確なあご骨像が分からなくなるが、石膏歯型に装着するCT撮影用キットによって正確な3次元画像を得られる。また、蝕力覚感知デバイスを利用することで、埋め込みたい場所に応じた立体表面の硬さや弾力などを擬似的に感じながら、穿孔位置の探索ができる。 インプラント手術は歯肉を剥離して行うことが主流だったが、骨や神経の位置を高精度で確認して事前に検討しているため、患者負担の軽減につながるという。

この、記事に載っている和田精密歯研という会社は歯科医療界では名の通った会社です。しかし残念ながら、この会社の作ったサージカルガイドの詳細は分かりません。

実は当院ブログでも以前にご紹介させていただいたように、サージカルガイドやオペレーションガイドというものは決して新しいものではなく、世界のいくつかの国ですでに開発されているものなのです。理論上はインプラントの手術をより正確に行うためのものとされているものです。実際に私たちの医院でもその開発に関わりを持つことがありましたので、そのコンセプト、利点、欠点はある程度理解できています。

実際に、サージカルガイドは、その利点欠点を十分に理解し、適応できる症例を適切に選択し、使用方法を守ることで、治療計画の精度を高め、ある程度患者さんの負担軽減や、インプラント体の埋入位置の精度を高めるのに役立つものだといえます。

確かに、この記事に書かれているように「インプラント手術というものは歯科医の勘と経験による」ことはある意味では事実です。が、その後の「そのために医療事故や不適切な処置の事例も増えている」というのは少し納得いきません。産経新聞の記者さんごめんなさい。

この表現は「インプラント手術というものは歯科医の勘と経験に頼らざる部分もあるため、経験不足の歯科医や技術、知識の伴わない歯科医が手術を安易に行うと危険な場合があり、最近、さまざまな要因が伴い、医療事故や不適切な処置の事例も増えている」とするべきではないでしょうか?

これも私たちのブログでは、よく触れていることなのですが、最近、インプラントを取り巻く環境は、決して良い方向に向かっているとは言えないのです。商業主義が蔓延し、インプラントメーカーのほとんどは、インプラント関連商品を「売れ売れ」と言わんばかりの勢いです。

以前なら、多少なりとも教育、研修を受けた歯科医師が、インプラントに携われるようになるというシステムがあり(それだけで十分とはいえませんが)、それが一つの試金石になっていたのかもしれません。実際にその研修には、ある程度高額な費用と研修日数が必要でした。

そういったものすら一切なくなり、歯科医師ならばだれでもインプラント手術ができるようになっている現状は、もろ手をあげて賞賛できるとは思えません。

過去のシステムも確かに、時間と費用がかけられる一部の歯科医師だけに限定されるということが、正しいハードルであったか?と問われれば、決してイエスと答えられません。

これは、簡単に答えが出せるような問題ではないとは思いますが、今後歯科界の代表?あるいは、インプラントにかかわる見識のあるそして立ち位置のしっかりした人間たちの間で議論が必要だと思います。

また、あるインプラント関係者から、話を聞いたのですが、昨年、新聞報道でも取り上げられたインプラント治療に伴う事故の発表のあと、それまで何度かインプラント手術を行っていた若手の歯科医師が、あわてて解剖学の本を読みだしたといことがあったそうです。

もし本当なら愕然とします。このようなことなど、私たちには、考えられないことなのです。インプラントを勉強するには、解剖学を学ぶことは必須条件です。それをしないで、インプラント治療に携わってしまうという事実が実際にあるのかもしれません。そのような状態の歯科医師が、インプラント治療をすれば、それは事故も起こすでしょうし、問題も起きます。

こんなお話をするのは、単に現状を嘆きたいためでも、暴露話に興じたいわけでもありません。ましてや、新たにインプラント治療に取り組んでいる歯科医師たちの努力を否定するつもりもありません。いまでは、インプラント治療の大家となっていられるような歯科医師でも、はじめは皆初心者だったわけですから、これからもたくさんのすぐれた歯科医師が育っていくことはとても重要です。

しかし、残念なのは、インプラントを取り巻く環境でこのようなことが起こってしまっていること、それは、おそらく一部であろうということ、そして、それは単に歯科医師だけの問題ではないということ、他には、一生懸命勉強し、努力している歯科医師もいるということ、それが一つにくくられて表現されてしまう可能性があるということです。

この辺のことになると話が止まらなくなりますので、今日はこの辺にさせていただき本題に戻ります。

先ほどもお話した通り、サージカルガイドは理論上、優れている点が確かにあるのですが、それとて、使う医療者が正確に使用しないと問題を引き起こすこともあり、実際に、CT撮影から、サージカルガイド作成、そしてそれを手術に利用する段階で、ヒューマンエラーが起こり、極端な表現になるのですが、サージカルガイドを使用し、それを鵜呑みにしたまま、頼り切って使用したために、本来はそれを防ぐために使用したにもかかわらず、不適切な場所へ埋入や神経の麻痺等が起こってしまった事例の報告もあるのです。

ですから、現在でもサージカルガイドも発展途上の技術であること、そしてそれが、問題解決のすべてではないということです。

以前にもお話ししましたが、新しいものが出てくると、それがあたかも夢のような技術が開発されたように表現されてしまうことがあります。しかし、技術もそして人も磨かれて初めて本物となっていくのではないでしょうか?

この、和田精密歯研の開発したものは後発となるため、以前のものの欠点をなくすような形で開発されているでしょうから、楽しみなものの一つではあります。

しかし、いま、私がサージカルガイドについて思うことは、使い方を間違わなければ有用であるが、それに依存したり、頼り切ることはとても危険で、やはり使用する側の経験がものをいうのではないでしょうか?

たとえれば、車のオートマティックトランスミッションのようなものと言えるかもしれません。初心者にとってオートマでの走行は広い道、走りやすい道ではとても便利で、運転に慣れるためには、大変有用ですが、いきなりサーキットでレースをすることは、危険を伴います。サージカルガイドも簡単な症例から少しずつ修練していけば、それは大変有用になるでしょうし、ベテランにとっても難しい症例やフラップレス手術の大きな助けとなると思います。

当院でも、サージカルガイドを用いた手術も可能ですが、特殊な手術法(フラップレス手術)を行わない限り、通常の症例では必要ないと考えています。   

皆様からのご質問を募集しております。                          

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宜しくお願い致します。 

 こんなことがありました。親知らずのまわりの歯茎が少し腫れて、お痛みが出てしまっている方が急患でお見えになりました。幸いに親知らずを抜かずに消毒をするだけで何とかなりそうなので、今後暫くは様子を見ていただくことにしました。そして「もし万が一にもまた痛み出したら御連絡を頂ければ対応させていただきます」とお話をしたら、患者さんが、「こちらはいつも混んでいて忙しそうだから、突然連絡しては御迷惑ではないですか?」と言われたのです。
確かに、おかげさまで当院は現在も多少混み合っており、予約がとりにくい事もあり御迷惑をおかけしております。しかし、お痛み等で困っていらっしゃる患者さんは例外で、可能な限り迅速に対応させていただくつもりです。どうぞ、ご遠慮なく御連絡を下さい。もちろん、現実問題として予約をされている患者さんがいらっしゃいますので、お待たせしてしまうこともありますが、なるべく早く対応いたしますので、多少なりともお時間に余裕を持っておこし下さい。

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 さて本日から新たに、「Q&Aでわかるインプラント治療」をはじめます。第1回の今日は、みなさんからよくうける質問「インプラント治療の成功率は、90%以上というのは本当ですか?」についてです。 

このようなご質問に対し、多くの歯科医院が回答として、「インプラント治療の成功率は10年後で、95%以上とされています。」と答える事が多いのではないかと思います。

これは、ひとつの事実なのですが、十分な回答とはいえないと考えます。

結論からいうと、ある一定の条件をクリアした上では、インプラント治療の成功率は10年後で、95%以上になるといえます。

この回答(インプラント治療の成功率は10年後で、95%以上)にはちゃんとした裏づけがあります。その根拠として引用されるているのが、Adell 先生達(1990)の文献で、無歯顎(歯の1本も無い人)へのインプラント応用を語るとき、歴史的な臨床追跡研究とされているものです。

これは同じAdell先生達による1981年の追跡研究の続編といえるものであり、私たち臨床家への示唆に富む論文です。その結論として、無歯顎に関するインプラント治療は15年間に及ぶ追跡研究により、上下顎を通じて成功率が高く、長期的に予知性の高い治療法であることが唱えられていて、それがよく引用されています。

しかし、これはブローネマルクシステムと呼ばれるインプラントを、定められた条件のもとで、施術された結果を調査されたものなのです。今となっては、ブローネマルクシステムは40年以上の歴史を持つインプラントとなっていますが、全ての歯科医院がこのシステムのインプラントを行っているわけではないのです。また、ブローネマルクシステム自体も実際にはこの調査の時に用いたものとまったく同じインプラントシステムではなくなってしまっているのです。しかし、ブローネマルクシステム以外のシステムでも長期的な臨床結果の発表がされ、高い成功率が示されています。

実際に、色々なシステムで、インプラントのマテリアル、デザイン、表面の性状について、多く語られ、論議されてきました。全てとは言えないのですが、いくつかのシステムが信頼できるものといえるようになっているのは事実です。結果として世界で多く使用されているインプラントシステムの中には、信頼のおける製品が存在しているといえると思います。

最近では、世界各国の著名な研究者、臨床家からの発表でも、「インプラントのマテリアル、デザイン、表面の性状については多く語られ、良いシステムが存在している。しかし、歯科医師のトレーニング、技術についてはあまり語られなかったのではないか?」という意見を耳にすることが多くなっています。

私たちがインプラントの教育を受けた頃は、確かに歯科医師のトレーニング、技術についてはあまり語られてはいませんでした。それは、その当時、決して「誰が行っても上手くいきますよ」といわれていたわけでなく、その前提には、インプラント治療に携わる以上、それ相応の知識を得、自ら進んで技術の研鑽をするのは当然であったと思うのです。

ところが21世紀を迎え、発表されるインプラントに関する情報の殆どは高い成功率を示していたために、最近は残念な事にインプラント開発メーカー自体が、その販売に重きを置いているのか、風潮として、「インプラントはそのシステム自体はすでに確立されたものであり、誰がやっても上手くいく」とでもいっているかのように思えるのです。

以前ならば(懐古趣味ではありません)決してそれだけでは十分なトレーニングとはいえないまでも、ある一定の研修を受け、それを修了した者がインプラントを始めるのが当たり前であったのですが、今はそれすらなくなってしまっているのです。

その裏側には、「インプラントシステムはいくつかの優れたものが存在しているが、近年それを使う歯科医師の技術に、バラツキが多く存在してしまっているようである。」ということが示唆されているのではないでしょうか?

つまり、

「インプラント治療の成功率は、90%以上というのは本当ですか?」というご質問に対して、我々医療従事者は

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「定められた条件を守り、知識、技術のある術者が行った場合、ブローネマルクシステムをはじめとして、いくつかのインプラントシステムが、高い成功率を示す。」と答える必要があるといえます。                                           

 お分かりいただけたでしょうか?今後、みなさんからのご質問に対してこのような形で、インプラントチームよりお答えしていきたいと思います。  

 なお本日より、「Q&Aでわかる歯科インプラント治療」へのご質問受付フォームを作成いたしました。ご質問がある方は、こちらへ。 

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東京都中央区明石町8-1
聖路加ガーデン内
セントルークスタワー1階

新患随時受付中
  • 予約制
  • 訪問治療
  • 車いすOK
  • 盲導犬OK
AM 9:00〜13:00
PM 月・水・土・祝
14:30〜18:00
火・金
15:00〜18:30

休診日:木、日

プロフィール

馬見塚デンタルクリニック院長
馬見塚賢一郎
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